ジャスコ撤退後のSC再生
地域密着型SCへの挑戦
地域の核となっていた店舗が突然なくなることは、地域の商業活動にとって極めて深刻な影響をもたらし、主役のいない撤退後の施設は廃墟同然です。でも、撤退した跡をどうするかに企業側は責任を取ることもなく、地域の商業活動が停滞し生活が不便になっても一切関知しないことが業界の当たり前の事になっています。
しかし、地域最大の広大な面積をもつ貴重な建造物は発想を転換すれば大きなポテンシャルをもつ施設に生まれ変わることが可能です。その具体例として、正しくイオンの撤退物件である出雲市平田の総合スーパーの再生にチャレンジしました。
GMSと呼ばれる大手スーパーは90年代に巨大な店舗を激しい競争の中で強引に出店した仕組みは、建築協力金という名目で保証金を地主に預け、それを建築費に充てスーパーは自分の利用しやすい店舗を地主に建築させ、10年から15年程度の長期契約で賃貸借するものであった。しかし、途中解約に対する違約金等の明確な規定がなく、スーパー撤退後、地主は高額な保証金の返済義務と他に転用しづらい巨大な建物を抱え途方に暮れることになる。
民事再生等を使って資産流動化を達成しました。まずSPCを設立してサービサーを通じて債権を買い取り、優良テナント誘致や長期修繕計画など積極的なマネージメントを行うことで収益性を改善した施設に作り変えた。その結果、地主は自己破産を免れ、管理会社を設立し、SPCより依託されて地元にあって日常的な共有部分の管理、テナント間の調整等を行うことになった。
■なぜ、大手スーパーのSCはダメになったのか?
90年代に雨後の筍のようにできた総合スーパー(GMS)は今、曲がり角にきています。全国均一の金太郎飴のような総合スーパーを自分達の効率第一主義で作り、それらの採算が悪くなると切り捨て、より大きな規模の施設に切り替えるという大手スーパーのスクラップ&ビルドの事業戦略自体が限界にきているためです。その象徴的な事件がGMS最大手イオンの「100店舗閉店・転換」の新聞発表です。
小売りの原点に帰る
再生の基本は大手スーパーが失った小売りの原点に立ち戻ることです。そもそも小さいことが小売りの原点であり、「客は店に付くのではなく、人に付く」、「店の都合で商売をするのではなく、客の都合に合わせて商売をする」というのが小売りの本来の姿です。総合スーパーというのは、地域の人たちが毎日のように利用する施設であり、地域を大事にした丁寧できめ細かい商売をすることが生存競争に勝ち抜く王道と考えます。
地方においてショッピングセンターは地域最大の施設であり、人々に日々の買物だけでなく「楽しさを提供する」ことのできる魅力をもった施設であることを目指しました。その目的のために、2階部分をコミュニティのセンターとして機能するように広場を中心に様々なイベントが開催できるようにし、またこれからの時代に不可欠との考えから「大人のためのカレッジ」を中心的な施設として設置しました。
ショッピングセンターのオープンには大小さまざまな問題、課題が山積し、それらを根気強く解決していく粘り、熱意が必須となります。さらに、景気低迷による小売業界全体の元気の無さがテナント集めに完全な逆風となり、想像を絶する困難が待ち構えていました。結果として大手FCの入居は皆無となり、地元の意欲ある経営者の精鋭を集結させることで、大手スーパーのSCとは全く異なるテナント構成の、本当の意味での地域密着型ショッピングセンターとして体制を作ることができました。愛称をVIVA(ビバ)と呼び、2009年6月に無事オープン致しました。
オープン後の試行錯誤
ショッピングセンターの再生はオープン後が正念場です。計画段階の想定が狂うことも当然あり、現場第一主義で客の反応を感じ取りながら修正作業をスピード感をもって実施することが重要です。一方で、地域密着型ショッピングセンターとしての理念はぶれることなく、具体性や現実性を加え、より機能を強化し、ショッピングセンターの魅力を高める持続的な努力が求められます。ショッピングセンターViVAは確実に日々進化していきます。